容器(ボトル)のデザインと印刷について【オリジナル容器の制作ルール】

2018-12-28
デザイン制作

容器会社のデザイン室で働いていた記憶をもとに、容器(ガラスボトルや樹脂ボトル)に関するデザイン情報をまとめました。コスメやサプリ、トイレタリーなどの容器デザインを依頼された際、どこまでが再現可能でどこからが不可能なのかということを知っておくと、クライアントの要望に沿った提案ができるかと思われます。

化粧品の容器(ボトル)をオリジナルで作る

化粧品などに使われるボトルとジャー(クリーム容器)は、容器会社へ委託すれば完全オリジナルの形で作ることが出来ます。ただ、オリジナル形状の容器やボトルを作るにはそれなりのコストもかかるので、予算が厳しければ既製品のボトルに着色や印刷などのデザインを加えていくほうが無難です。

例えば、大手メーカーが使っている変わった形状の容器は完全オリジナルの金型で作っているはずなので、容器会社のカタログなどには載っていないことがほとんどです。逆に、市場でよく見る形(いろんなブランドで使われている形)の容器やボトルなら、どこかの容器メーカーが販売しているものだと予測ができます。

容器(ボトル)素材の選び方【ガラス、プラスチック、アルミ、ステンレス、紙】

容器やボトル選びは、まず素材選びからスタートします。一般的に出回っているのはガラスとプラスチック(PET/PP/PEなど)の容器が多く、次いでお洒落なブランドでよく見かけるアルミやステンレスのスタイリッシュな容器、エコな容器として注目されている紙など、色んな種類の素材があります。

化粧品のボトルとジャーに関して言えば、プラスチック→ガラス→アルミの順で市場で目にする機会が多いと思います。プラスチック容器が多く採用される理由としては、重量の軽さと不良の少なさからなのかもしれません。

素材には長所と短所があるので、用途によって素材を選択するといいですね。そこは容器会社のプロフェッショナルに相談してみるといいですよ。ここではそれぞれの素材のいいところ、悪いところ、デザインの作り方など、ざっくりと参考程度に書いてみます。(この限りではないので参考としてご覧ください)

ガラス容器(ボトル)のメリットとデメリット

持った時の重厚感や冷たい質感が特徴で、加飾(加工)を加えれば超高級感を演出することもできるのがガラスボトルの特徴。ただし、重量があるので輸送代がかかる、割れる心配(不良)がある、年数が経つとアルカリ(ブルーム)が出るという特徴がありますが、再利用が可能なので環境的にはおすすめできそうです。

ガラス容器(ボトル)の塗装と加工について【フロスト/パール】

まず、ガラスボトルの加工には「透明」と「マット(フロスト)」があります。フロストとは、ガラスの表面を削り、すりガラスのようなテクスチャーをつける加飾のことです。白い半透明のマットに仕上がります。

透明瓶には淡い色をのせると、ガラス瓶の肉厚部分が陰影となり、透明感も出て綺麗に仕上がります。フロスト瓶には淡い色よりも濃い色をのせることで高級感が出て品質がグッと上がります。具体的な例はサンプルなどを確認すればわかりやすいです。化粧品売り場にはたくさんの加飾ボトルがずらりと並んでいますので、たいていのことは実現できるはずです。

私が働いていた時に感じた人気加飾は、真珠のような輝きの「パール塗装」だった気がします。偏光パールという複雑な虹色パールの輝きも再現でき、綺麗でした。グラデーション塗装などもできちゃう。ボトル全面にフルカラーで色をつけるインクジェット印刷もできたはず。

ガラス容器(ボトル)の形をオリジナルで作る【金型成形】

オリジナル形状の容器やボトルを作るには金型が必要です。金型は結構高級なものなので、大量生産ができる製品や高級品などにおすすめです。

金型は割型(2つに分かれる仕組み)なので、容器のデザインをする場合には左右に分かれる形にする必要があったような。また、素材の性質上、四角いデザインでは角(エッジ)を出すのが難しいので、角を尖らせたデザインは再現しにくかったような。ということで、なるべく曲線を使った優美なデザインにすると美しく仕上がります。左右非対称で複雑な形だったり、金型が抜けない形状の場合は職人の手による生産になるかも?

補足情報:金型について】
容器やボトルの金型は、主に割型(2つに分かれる)がメインなので、デザインを作る際にもある程度縛りが出てきます。また、金型には「留型」というメーカーオリジナルの型が存在します。デザインでいう特許みたいなもので、メーカー以外は使用できません。

プラスチック容器(ボトル)のメリットとデメリット

プラスチック容器は一番多く出回っている素材ですが、最近ではエコの観点から、再利用できるプラや、何度でも使える付加価値の高い容器など、様々な提案が広がっているようです。丈夫で軽量、扱いやすい。また、デザイン形状の再現性が高く、様々なデザインにも対応できるのも特徴です。

プラスチック素材にはいくつか種類があり、化粧品などで一番多く使わているのがPET(ペット)、トイレタリー製品に多いのがPE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)です。PETは材質が硬く透明、PEは半透明で材質が柔らかい、PPは乳白色で材質が硬いという特徴があります。

化粧水などのボトルはPET、キャップはPP、シャンプー容器はPEなど、表示をよく見ればいろんなプラスチックが使われていると思います。

プラスチック容器(ボトル)の塗装と着色

プラスチック容器に色を付ける場合は、ガラスのように塗装するより、直接生地に色を練り込む「着色」という方法が一般的で綺麗かと思われます。色指示にはプラスチック専用のカラーチップを使います。透明or不透明、ツヤorマットなど、デザインの再現性も自由度が高い。パールを練りこめば真珠のようなボトルも作れるし、メタリックやラバー塗装など、業者さんに聞いてみればいろんな方法が見つかるはずです。

実際に市場で売られているボトルをサンプルとして持っていくと、大抵は再現できるはずです。アイデア次第で面白いデザインが作れるのもプラ容器の面白いところなので、デザインを作るときにはぜひ業者の方から塗装サンプルを見せてもらうことをおすすめします。

プラスチック容器(ボトル)はエッジの効いたデザインが作れる

プラスチックは角がしっかり立つデザインができます。直角は流石に無理だと思いますが、結構キレのあるデザインが作れるかもしれません。これは製造元によるかもしれないので要確認。

アルミ、ステンレス容器(ボトル)のメリットとデメリット

アルミ&ステンレス容器は、無機質でスタイリッシュ、軽量。おしゃれ系ブランドによく使われているイメージです。アルミは素材自体が柔らかく、衝撃に弱いかもしれません。ステンレスの方が硬くて丈夫ですが、当然価格は高くなります。アルミやステンレスのボトルをオリジナル形状で作るという話はあまり見聞きしないです。ポンプで差をつけたりするのでしょうか。

付属品(キャップ/アトマイザー/ポンプ)について

ボトルやクリームジャーに付属しているキャップ、アトマイザー、ポンプにもデザインを施すことができます。ほとんどは既製品や輸入品を使うことが多いと思いますが、着色や塗装などで色付けも可能です。金属のような質感を出すために、蒸着(金属を定着させる加工方法)という方法で塗装していることも。

クリームジャーのキャップのように、広い天面が使えるならシルク印刷やホットスタンプで印刷ができますし、側面にも帯印刷をすることが出来ます。(緩やかなカーブ、直線部分のみ印刷可能)

例えばアウターとインナーに分かれている二重構造のキャップなら、かなりデザインで遊べるのでおすすめ。キャラクターの形をした3Dキャップなども面白いですよね。

容器(ボトル)の印刷方法【シルクスクリーン/インクジェット/転写/シュリンクフィルム】

容器やボトルへの印刷は、直接インクを刷るシルクスクリーン印刷が一般的です。シルク印刷は特色で色を作るため、カラーチップ(PANTONE/DIC/TOYO)での指示が必要です。インクの色は職人さんが調色して作るため、100%正確で完璧な色合わせは難しいと思った方がよさそうです。
特色印刷(DICやPANTONEでの指示)についてはこちらで詳しく解説しています

シルクスクリーン印刷の注意点

特色印刷では版下(印刷用データ)が必要です。Illustratorで作る場合、0.3pt以下の線は印刷が出ないので注意。文字のサイズは5pt以上が推奨。写真やグラデーションなどのフルカラー印刷の場合は「インクジェット印刷」か「転写」になります。ちなみにインクジェット印刷には白色が存在しないため(CMYK)、下地に影響を受けるボトルの色なら、白いインクを下地として印刷する必要があります。もはや下地は白いボトルにしたほうがいいですね。特色印刷の版下の作り方はこちらで。

エコな印刷ならUV印刷がおすすめ(瞬間硬化)

シルク印刷より若干高価ではありますが、紫外線で硬化するタイプのUVインキを使ったUV印刷もおすすめです。NonVOCのUVインキを使えば、環境にも優しく省エネ。さらに、インクやグロスを重ねて厚みを出す「厚盛り印刷」もできるので、デザインのアクセントとしていろんな使い方ができます。

ラベル印刷とシュリンク印刷、転写について

印刷の色数が多い場合には「ラベル印刷」や「シュリンク印刷」を使います。シルクなどの特色印刷では、色数が多ければ多いほど値段が高くなるので、4色を超える場合にはオフセット印刷が使えるラベルに切り替えた方がコスト的には優しいかも。

また、フルカラー印刷を全面に使いたいなら「シュリンクフィルム」や「転写」がおすすめ。シュリンクフィルムは曲面でも関係なく印刷を施すことができるので、複雑なボトル形状の場合はシュリンクが便利。グラデーションなどの複雑な印刷には転写印刷を使うこともあります。

いずれもにしても色数に縛られることなく、自由にデザインが作れるのがメリットです。

ラベル印刷の場合は素材が選びも大事。シャンプーや飲料など、水滴がつくものは防水仕様の紙(フィルムやユポなどの合成紙)にすることで、破れたり剥がれたりするのを防ぎます。水に関係ない場所なら一般的な紙ラベルでOK。丈夫にしたければ表面ニス、PP加工。

箔押しについて【金箔、銀箔、カラー箔(ホットスタンプ)】

容器の印刷には一般的に使われる箔押し(ホットスタンプ)印刷。ツヤとマットが選べ、帯巻きも可能。少し落ち着いた金色や銀色を使いたいときには金刷りや銀刷りという特色印刷もあります。また、特殊な印刷に「厚盛印刷」という立体的な印刷方法もあります。何重にもインクを盛ることで、文字やマークに立体感を出すことができるので、エンボス加工のような立体感が表現できます。

紙パッケージ(化粧箱)のデザインについて

化粧箱とは、緩衝材を兼ねたボトルの外装パッケージのこと。紙やプラスチックで作ることが多く、印刷はオフセットです。中に入れる緩衝材は2〜3mm必要なので、外箱を作る際には容器より左右6mmほど大きく作ることが目安。入稿の際の版下は展開図で作るといいですが、展開図が作れない場合は業者さんに相談すれば、サンプルを作ってくれるかと思います。複雑なデザインは機械での組み立てができないので、内職のための人件費が別途かかることも。

容器(ボトル)のデザインとコスト

容器やパッケージのデザインは自由度が高く、アイデアによっては様々なものが作れるのですが、実際にできるかどうかは売価とコスト次第だと思います。奇抜な形や過度な装飾は、デザイン的には目を引きますが、売価の設定によっては必ず妥協点を見つけないといけなくなることも多いのではないでしょうか。

また、近年では過剰包装も問題視されており、各都道府県で適正包装規則というルールもできています。例えば大阪市なら、空間容積と包装経費が15%以上のものは過剰とみなされるようです。(余白を少なく、経費を抑える)

色々と規定が変わる中、デザイナーもコスト面と環境面を考えてものを作る必要がありそうです。素敵なデザインを思いついても、金額が合わなければ世に出ることもなくボツです。

容器(ボトル)デザインに使える素材

容器(ボトル)のデザイン提案では、加飾についての説明と、リアルに魅せるグラフィック技術があれば尚良いですね。本物そっくりに作るには、Photoshopで写真を加工してモックアップを自作する方法もありますが、Illustratorのブレンドツールを使ってイメージオブジェクトを作ることもできます。

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