デザインの著作権と譲渡、二次使用と金額について

2019-01-04
デザイナー情報室

デザインのお仕事を受けるときも、またデザインを依頼する側も知っておきたい、知的財産権、著作権についてのまとめです。昔からデザイン業界ではこの手のトラブルが多いと聞きますので、一通り目を通しておくと予防に繋がるかと思います。

ここに書いていることはあくまでも情報としてのまとめなので、もっと確実性が必要であれば専門家(弁護士・弁理士)へ委託することをおすすめします。二次使用やロイヤリティについても調べました。

デザインの価値とは?

まず、デザインにおいての価値とはなんなのでしょうか。作り手の才能やセンス、人気によって時価が上がる価値、アンティークのように年数が経てば上がる価値、労働力(技術)の価値etc…いろんな付加価値(余剰価値)が存在します。

「大衆が欲しいと感じ、買い求めるもの」がより高い価値を生みだすのはみなさんご存知の通りですが、デザインはその役割を果たすものだと思います。

中身が全く同じものが二つ並んでいたとして、一方が見栄えのしない外装、もう一方が魅力的な外装だとすれば、それだけで人の目は惹きつけられ、購買に繋がると思います。

デザインにおける著作権とは

デザイナーが作ったデザインの著作権は、基本的にはすべて制作者(制作会社)側にあります。商標登録などは必要なく、その作品が作られたときに自動的に発生し、著作者の没後50年(2018年12月30日以降は70年に改定)まで保護の対象となるみたいです。

著作権が対象となる作品の定義は明確に決まっているわけではなさそうですが、創造性やオリジナル製のあるものが対象になるようです。ロゴ、マーク、イラスト、模様など、他にはない意匠のあるデザイン。

例えばWebサイトなら、画像や動画、イラストなどの「転用禁止」「二次使用禁止」。場合によっては作者の名前やURLなどのソース、クレジット情報を記載することで使用可能な場合もありますので、迷ったらガイドラインを確認するか、直接問い合わせる方がいいですね。

ちなみにレイアウト(色や配置などの構図)やロゴタイプ(文字)に関しては、よほどのオリジナル性がないと著作権対象外となるみたいです。

意匠権との違い

意匠権は、自らで登録をするもの。規定は色々ありそうなので、こちらも専門家に相談することをお勧めします。ざっくりと、工業製品(量産製品)であること、製品公開前に登録済みであること、創作容易でないものに限られるようです。

著作権の保護期間について

著名人の作品は没後50年まで保護対象でしたが、2018年12月30日以降は没後70年に改定されたようです。無名・変名の場合や、団体名義での著作物は没後70年ではなく、公開後70年が保護対象とされています。(著名になればなるほど保護期間が長い)

例. 発注したイラストを別の媒体で使えるのか?

例えば、パンフレット用に作ったイラストを、他の媒体(フライヤーやWebサイトなど)に使いまわすのは基本的に禁止。デザイナーは流用を防ぐためにデータを渡さず、基本的には現物支給というのが一般的です。社内回覧用の資料などに使うのは問題ないですが、商用として使い回すのはNGかと思われます。

もし自由に使いたい場合は、両者間で二次利用の取り決めをするか、著作権譲渡契約(著作権を買う)を締結する方法などがあるようです。

著作権譲渡とは

著作権というのは、厳密には譲渡できないことになっているみたいですが、著作物の一部の使用を許可する契約(使用承諾の契約)は可能らしいです。その著作物を使って何かを作りたい場合は、著作物の利用権を買って、自由に使わせてもらうというしくみのようですね。

著作権をまるっと買う場合、将来的な利用価値も含めるみたいなので制作費の2倍〜10倍ほどの結構な金額になることもあるようですが、利用するたびに使用料を払う「ロイヤリティ制」というものは、サブスクのような感じで利用しやすいようです。

ロイヤリティ(使用料)とは

作った著作物を、二次使用したい場合に都度、使用料を払うしくみです。だいたい制作費の10%〜を支払うことで折り合いがつくようです。影響力の大きい媒体での利用や、企業規模によっては50%を超えることもあるみたい?

デザイン料金の設定について

デザイン料金の設定は各社によって違いますが、グラフィックデザイン協会(JAGDA)が提示している計算式を見本として考えてみたいと思います。(解釈が間違ってるかもしれないので、正式には公式WEBサイトでご確認ください)

計算方法は「作業料(1.クリエイティブ作業/2.カンプやフィニッシュなどの単純作業)」に「質的指数(キャリアや付加価値)」と「量的指数(制作数)」をかけて「支出経費」を足す、というものです。

作業料と質的指数とは

アシスタントを卒業した一般的なデザイナーなら時給2000〜5000円。これが作業量のベースとなります。これにクリエイティブ制作費や付加価値が加わるのが「質的指数」。デザイナーのセンスや技能、知名度などでブランドの価値が上がるならば、質的指数は上がります。

例えば経験年数における作業スピードや技術で考えるなら、アシスタントや駆け出しが0.5倍、10年以上のキャリアがあるなら1.5倍という具合に、スキルに応じて加算されるみたいです。

一方、カンプやフィニッシュ作業など、誰が作っても変化がない単純な作業量には適応されません。

支出経費と量的指数

支出経費はデザインを作るのにかかる費用です。ソフト、維持費、交通費、資料費、外注費、素材費など。

量的指数とは、部数やマスメディアの種類、数などによって計算するようです。大きな仕事になれば、それだけ責任が伴い、反響も大きい。

制作料金の計算式

以上を踏まえ、きっちり計算をする場合の式はこうなります。

制作料金 = (質的指数×作業料) + 作業料 + (作業料×質的指数×量的指数) + 支出経費

時給3000円ベース、キャリア10年、実働10hで何かを作るとすると?

(1.5×3万円)+ 単純作業料 +(3万円×1.5× ?)+ 経費 = 5万円〜(ざっくり)

これが全てとは言えませんが、デザイン料金を正規で出そうとすると結構複雑です。制作会社やフリーランスのデザイン料金の相場や、内訳についてまとめた記事がありますのでよければ参考にしてみてください。大体のベースラインは合と思います。

デザイン料金の相場【価格表と決め方】 – freespace

デザイン料金の計算方法は結構複雑です。デザイナー自身、もしくはデザイナーにお仕事…
officehojo.com

著作権トラブルを回避するために

デザイン料金と著作権などの話は、一般社会ではなかなか表に出にくい情報。なので、この中身の意味を知らなければ、デザインの金額が思ってたより高いことにびっくりすることもあるかもしれません。音楽や映画などで考えれば、クリエイティブの良し悪しで大きな利益やイメージアップにつながるのも事実。大手企業がかける宣伝費は相当なものだと思います。

今はインフルエンサーを使ったSNSマーケティングなども増えていますが、情報が増えすぎて何がいいのかよく見えない時代でもあります。だからこそ、信頼の時代なのでしょうか。頑張っているデザイナーさん達がよりよい働き方ができる日が訪れますように。