グラフィックデザインの永久保存版「THE POSTER」【おすすめのデザイン本】

2019-05-26
デザイナー情報室

デザイン関連の本はたくさんあります。私も十数年、雑誌から資料集まで色んな書籍に触れましたが、何度も読み返したくなる本というのは結構少ないものです。今回私がおすすめしたい本はたったの一冊ですが、この一冊を侮ることなかれ。この本は年月を重ねるごとに味わいが深くなる、いわばヴィンテージ、いやアンティークなのです。

グラフィックデザインの歴史が見れる教科書(150年分の広告ポスター)

まず、本を選ぶ際のポイント「トレンド系 or 定番系」。トレンド系は書店で溢れかえっている、いわゆる今風のデザインを作るための本です。

ここで紹介する本はトレンド系ではなく、定番系。いや、一生モノ系。グラフィックデザインのポスター(広告)を1000点、約150年間の記録をダイジェストで紹介している写真集です。初心者でも上級者でも関係なく楽しめる、勉強できる本となっています。

デザインはとにかく「見て」「触れて」「感じる」ことが大事。これはどのデザイン系の学校や会社でも教わる最初の一歩です。どんなデザインを見て、触れて、何を感じるのか。どういう意図でこの作品が生まれたのかを考えることこそ学びに繋がります。

何度見返しても新たな発見がある。時代を感じ、グラフィックとデザインの本質を知る。そんな一冊です。

前置きが長くなりました。その本がこちら。

The Posters: 1,000 Posters from Toulouse-Lautrec to Sagmeister

1800年代〜2000年代の間に発表された世界中の著名なポスター(広告グラフィック)を1000点掲載している本で、およそ500ページもある分厚い写真集。海外で販売されている本なので全編英語ですが、メインは作品なので全然問題ありません。日本人の作品も少しだけ載っています。本当にいろんな種類のデザインが載っているので、必ず「これ!」という作品に出会える一冊です。

ちなみにこの本、一般的な書店には置いていません。洋書店で偶然見つけた一冊で、後から本屋を探したり検索をかけてもなかなか詳細が出てこなかった本です。商品の内容や購入はAmazonからどうぞ(タイトルのリンクから飛べます)。新品、中古、ペーパーバックが選べるようです。

グラフィックデザイン(広告)の流行と時代背景(トレンド)

この本の面白いところは、年代の移り変わりによるトレンドの変化が見られるところと、アナログからデジタルへ以降していく技術的な歴史背景が感じられるところです。

以前オーストリアのグラフィックデザイン編の記事でも書いたような、アール・ヌーヴォースタイルのグラフィックデザイン時代から始まり、ミッドセンチュリー時代、現代へとデザインの雰囲気が変わっていく様子が作品を通して伝わってきます。

時代が変わる度に変化する流行りのフォントやカラー、絵のタッチ。戦時中はメッセージ性の強いポスターが並ぶところも感慨深い。

美術館で展示されている作品を凝縮したように、グラフィックデザインの歴史がこの一冊に詰まっています。

ほんの一部ですが、少しだけ中身を紹介します。

1800〜1900年代のグラフィックデザイン

フォントや絵のタッチに特徴があります。トゥールズ=ロートレックやアルフォンス・ミュシャなどによる繊細な絵のグラフィック。技術や才能が唸る、美術作品に近いポスターです。

1900〜1940年代のグラフィックデザイン

やや絵がデフォルメされてきます。構図もダイナミックになり、写実より抽象が多くなってきました。配色も対比を使ったアバンギャルドなイメージが多くなります。

1950〜1990年代のグラフィックデザイン

さらに簡易化され、タイポグラフィがメインになったり、メインビジュアルがドンと大きく入った現代の広告の土台が出来上がってきました。幾何学的な直線も増え始めます。2019年はミッドセンチュリーがトレンドということなので、この辺りのデザインが今年のトレンドとなります。

2000年〜2010年代のグラフィックデザイン

近代の広告デザインです。かなり配色や構図にモダンな雰囲気が出てきています。写真をメインにする広告や、デジタル技術を駆使したアート性の強い広告が増えています。

この本では2010年の“香港インターナショナルポスタートリエンナーレ”の作品を最後にしています。2011年以降のグラフィックデザインは皆さんの知ってのとおりです。街で目にする機会も多く、本もたくさん出版されています。

このポスター集の一番初めは1805年、ロンドンで印刷された“トラファルガーの海戦での負傷者を伝えるポスター”でした。日本では江戸時代後期頃のお話です。

美術館での展示や専門書くらいでしか触れることができない昔の作品群を、抜粋して集めたアルバムのようなこの本。お気に入りのアーティストが見つかれば、個展に出向いたり作品集を集めてみるのも楽しいです。

日本の書店ではなかなかお目にかかれない作品集。私がオススメしたい一冊です。

THE POSTER
-1,000 Posters from Toulouse-Lautrec to Sagmeister-

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