「デザイン」というキーワードで検索をすると、必ずトップに食い込んでくる「デザイン思考」というワード。デザイン思考って何だ?なぜこんなにバズっているのか。みんなが調べている「デザイン思考」について、ちょっと偵察してみました。
デザイン思考=5つのステップ?
「デザイン思考」と検索してトップ表示されたサイトに紹介されていたデザイン思考のプロセスはこうです。
- empathize(観察、共感)
- define(問題定義)
- ideate(アイデア創出)
- prototype(プロトタイピング)
- test(検証)
いわゆるデザイナーが何かを作り出す際に辿る5つのステップを、企業でも実践し、問題をクリアにしようということらしいです。
企画とかクリエイティブに関わる人にはいい教科書的なものなのかもしれませんが、問題となっているのは、このプロセスをそのまま実行し、解決したと思い込むことと、ビジネスの現場全般に対してこの「デザイン思考」を実践せよという風潮。この「デザイン思考」というバズワードに対しては疑問を投げかけるデザイナーもいるようです。
デザイン思考=アイデアの貼り出し?
デザイン思考というワードに興味を持ったきっかけは、AXISというデザイン雑誌で「デザインシンキングなんて糞食らえ」と異議を唱えているグラフィックデザイナー、ナターシャ・ジェン(ペンタグラム)さんの記事を読んだことがきっかけです。
彼女が異議を唱えていたのが、デザイン思考というバズワードの塊を使ってデザイン思考を育てるビジネスが発足したり、そもそもこのデザイン思考のルール化に対しても危険を感じているというようなことでした。例えば、デザイン思考を育てるワークショップなどでは、付箋にアイデアを書いて貼っていくスタイルが定番になっているようですが、付箋に貼り出していくアイデア出しを当たり前のようにみんなが実践していく「スタイル化」ももったいないし、そもそもデザインに必要不可欠である「提案と批判」が抜け落ちていることにも疑問を感じる、というようなことでした。
たしかに、上で紹介した5つのステップはデザインを作り出す上で通るプロセスなので、内容に間違いはないのですが、これを実践する非デザイナーたちが、このステップを踏むだけでデザインが完成する、と思うことが危ういと警笛を鳴らし、それはトレーニングをせずにオリンピック選手を目指すものだと比喩しています。
デザイン思考のステップを踏んで導き出した答えが、必ずしも正解だとは限りません。意匠設計とはそんなに簡単なものではないのですね。
面白い形や色が想像力を掻き立てる
総体的に物事を見る力を養うことがデザイナーには必要だと言われますが、それには現実世界にある多くのものを見て、触れて、時に批判し、考えを巡らすことが重要なトレーニングです。デザイナーの多くは何を見て、何を考え、アイデアを出しているのか。参考書や資料や理論的な教科書も大事ではありますが、もう少し複雑に、色んなものを集めるのが面白いです。
例えば植物はその典型的なもので、原産地ごとに葉や幹の形、サイズ、花の形、色などが全然違います。動物も同じ。民芸品なども面白いです。色使いや手触り、形などのアイデアが豊富です。
最近では食虫植物のフォルムが妙に気になり、買ってしまいました。調べてみると袋の部分は「ピッチャー」と呼ばれているらしく、そういえばカプチーノを入れるときに使う「ミルクピッチャー」に形が似ているなぁと想像力が膨らみました。
何でこんなところに葉が生えているのか。なぜ棘が必要だったのか。この機能は要らないんじゃないか。そんなことを考え、よりよい方法を導き出すトレーニングの方が有効なのかもしれません。
このように、想像力を掻き立てるものを自分の身の回りに置くことが大切なのだと、先のデザイナーは言っています。バズワードである“デザイン思考”にとらわれないようにと警笛を鳴らしています。これは、デザインのプロセスというものが軽視されつつあるということにも繋がるのかもしれません。
ちょっと難しい話になりましたが、人々の批判がある限り、デザインに完成などあるはずがないのです。よりよい提案というのはたくさんありますけどね。
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