ここ数年のデザイントレンド「手書き風フォント」「手書き文字」「ゆるいイラスト」。Adobeフォント(Typekit)やフリーフォントを使う方法もありますが、もう少しリアルな手書き文字を作りたいことってありますよね。
たとえばペンタブを使ってブラシツールや鉛筆ツールで手書き風文字やイラストを描く方法もありますが、インクのギザギザ感を出すためのエフェクトをかけたり、リアルさを出すために細かい調整をするのに結構時間をとられたりして、結局書いた方が早いんじゃないだろうかと思うことも多いです。(激安ペンタブを買ったので、筆圧感知機能を使って手書き風文字を作ってみました)
まずは手書きフォントを探して、いいものがなければ自分で描く。これが一番いい方法かなと思います。
目次
英語の手書きフォントが豊富!「dafont」の「handwritten fonts」
日本語の手書きフォントはあまり種類がないですが、英語ならたくさんあります。英語の手書き文字のフリーフォントをお探しなら「dafont」のhandwritten fontsがおすすめ!
dafont以外にもフリーフォントの有名サイトはたくさんあります。手書き風と言っても色んな種類のテイストがあるので、フリーフォントサイトのまとめ記事でチェックしてみてくださいね。
Illustratorで手書き風の文字&イラストを作る「画像トレース」機能
イラストレーターには、画像を自動でトレースしてくれる便利な「画像トレース」機能があります。リアルな手書き風文字を作るなら、紙にサインペンで書いた文字をトレースしてオブジェクト化してしまいましょう。自分で書いた文字のラフ感を残したまま印刷データに起こすことで、手ブレのあるリアルな手書き文字が作れます。
トレースに使うサインペンは黒色の中太くらいがおすすめですが、仕上がりイメージの太さで作る方が後の作業が楽です。コントラストが大事なので、なるべく真っ白の紙を用意し、ペンで文字を書きます。
書いた文字をスマホカメラなどで撮影し、画像データに変換します。なるべく真上から垂直に、明るい場所で撮影しましょう。少し暗くなったなと思ったら、Photoshopなどの画像補正機能で明るさレベルを上げると大丈夫です。文字だけをくっきりトレースするため、なるべくコントラストは強めにしておきます。(黒と白の境目をしっかり出す)
撮影した画像をIllustratorに配置し、文字をトレースする
撮影した画像をAirDropなどでPCへ送り、イラストレーターを立ち上げ、画像をアートボードに配置します。(画像の配置はドラッグ&ドロップでOK)
画面上はこんな感じです。結構暗めですが、今のイラストレーターの性能は上がっているので、このくらいのコントラストでもきちんと認識してくれました。
Illustratorで画像をトレースする方法
配置した画像を選択ツールで選択すると、上のコントロールバーに「画像トレース」というボタンが現れます。(なければ「ウインドウ > 画像トレース」で呼び出す)
「画像トレース」ボタンを押すと、まずはデフォルトのモノクロ二階調に分けられます。
この時点ではまだオブジェクト化されていません。
トレース後の細かい設定は、コントロールバーの「プリセット」もしくは「画像トレースパネル」から設定できます。トレース後は文字と余白の部分も残るのですが、文字だけを残したい場合は「ホワイトを無視」にチェックを入れればOK。
トレースした文字はパスの数が多くなりがちなので、ここでパスを少なく設定することもできますし、後から「パスの単純化」で少なくすることもできます。(パスが少ない方がデータは軽くなる)
設定がOKなら、トレースした画像をオブジェクト(パス)化します。トレース結果の右横にある「拡張」ボタンをクリックして、白い部分と黒い部分を分離させます。
拡張ボタンを押すと、トレースした画像がパスになります。
これで画像の文字がオブジェクトに変換されました。
「ホワイトを無視」にチェックが入っていると文字だけが残りますが、デフォルト設定では上の画像のように黒塗りの部分と白塗りの部分に分かれてトレースされます。
「自動選択ツール」で同じ色をまとめて選択→削除
デフォルトで残った白い余白部分は、自動選択ツールを使って一気に消すことができます。自動選択ツールは、ツールバーにあるキラキラした棒のようなアイコンです。ツールバーにない場合は、選択ツールやダイレクト選択ツールの後ろに隠れていることもあるので、アイコンを長押しして探してみましょう。
※それでもなければツールバーの一番下にある「ツールバーを編集」アイコンをクリックし、呼び出しましょう。
自動選択ツールアイコンを選択した状態で、白色の部分(どこでもOK)をクリックすると、白色の塗りオブジェクトが全選択されます。
違う色が混じっていないか確認するため、左のカラーパネルでチェックします。左側の塗りパネルが白色で表示されていれば大丈夫ですが、ここに違う色が混ざっていると「?」マークに変わっています。
白だけを選択できていたら、そのまま削除キーで消してしまいます。
これで文字だけが残りました。
イラストのトレースなどでは塗りの部分も活用したりするので、この自動選択ツールは重宝します。色分けしたいときに自動選択ツールを使ってグループ分けしていくんですね。同時にレイヤー分けも。
パス(アンカーポイント)を減らすなら「パスの単純化」ツールで
画像をトレースした後、思ったより輪郭のパス(アンカーポイント)が多くてギザつきが目立つ時があります。そんなときは「パスの単純化」ツールを使い、パスの数を減らして滑らかにします。パスの単純化は「オブジェクト > パス > 単純化」から設定できます。
オブジェクト(パス)の色や形を変える
文字がオブジェクトに変わったので、ここからは自分の好きなように調整していきましょう。色はカラーパレットで自由に変えることができます。例えばショッキングピンクにするとこんな感じ。
トレース後は文字がグループ化されているので、文字の間隔を調整したい場合や、個々に変形したい場合はグループを解除してから作業をします。(グループ化の解除「command + shift + G」)
文字の太さを変える「パスのオフセット」機能
文字の太さを変える場合、線を追加して太らせてもいいですが、綺麗な太文字を作ろうと思うなら「パスのオフセット」機能を使います。オフセットとは、オブジェクトの外側や内側に肉付けをする機能です。
文字を選択した状態で、メニュー「オブジェクト > パス > パスのオフセット」へ移動します。次に、オフセットのオプション設定画面が現れるので、ここでオフセットの数値を変えて太さを調整します。1mmにすればオブジェクトの外側に1mm分太り、-1mmにすればオブジェクトの内側に1mm細くなります。
オフセットのいいところは、元のオブジェクトを残したままオフセット後のオブジェクトが追加されること。失敗しても消せばいいので、結構便利に使えます。
マーカー風の文字を作るなら「乗算」ツール【水性ペンで書いたような文字】
蛍光ペンや水性マーカーで書いたような透け感を出したい場合は、透明効果の「乗算」を使います。乗算とは、下の背景に馴染ませるために色を染み込ませる(乗じる)機能なので、透明フィルムの重なりや、テープを貼ったような質感なども作ることができます。
乗算は透明パレットから選ぶことができます。(メニュー「ウインドウ > 透明 > 乗算」)
乗算されているのがわかりやすいように、背景を多色のボーダーにしてみました。乗算した文字が後ろの背景の色の影響を受けているのが確認できると思います。透明にすると白いかすみが残りますが、乗算にすると色が重なります。
応用すれば、セロテープで貼ったようなデザインも「グラデーション+乗算+透過」で作ることができます。
イラストレーターの機能を使えば、少しの知恵で色んな表現ができるようになります。問題は作り方と組み立て方。自分が作りたいイラストやデザインは、どの機能を使えば綺麗に早く作れるのかを考えながら作業をすると、どんなデザインでも素早く作れるようになりますよ。
オートトレース機能もそうですが、イラストレーターにはマイナーだけど覚えておくと便利な機能もたくさんあります。イラストレーターを使いこなしたい方のために、覚えておくと便利な機能や情報をまとめた記事を作ってみたので、色んな機能がありすぎてよくわからないという方はぜひご覧くださいね。