テキストを使ったグラフィックデザインやDTPデザインにおいて、フォントの選び方は出来上がりを左右する重要なファクターです。死ぬほどある英語のフォント、適当に使っていてはデザイナーとは言えません。コンセプトに合ったフォントを正しく選んで、トンマナに沿ったかっこいいデザインを作りましょう。
目次
フォントの種類とデザイン(セリフ体とサンセリフ体の違い)
フォントというものがよくわからないうちは、全部が同じようなフォントに見えがちですよね。膨大な数のフォントの中で、何を選んでいいかよくわからないからとりあえず目立つ装飾フォント(ディスプレイと言います)を選んでいませんか?
まず初めに、フォントの種類は2つに分けることができるので、そこから選択していきましょう。
一つ目は「セリフ体」。図の黄色印のように、うろこのような装飾があるオールドスタイルの種類です。
そして二つ目は装飾なしの「サンセリフ体」いわゆるゴシックと呼ばれるものです。
その中間に位置する「スラブセリフ体(エジプシャン体)」は、セリフ体の派生であり、近代のフォントです。一応セリフ体に属するのでカウントしません。筆記体のような「スクリプト体」もセリフ体の派生です。
セリフ体とは(オールドスタイル)
セリフ体は、日本語書体でいうところの明朝体にあたります。格式高いものや伝統的なものに使われます。古い書物や歴史ある紙面、ホテルや美術館などの施設ではセリフ体がよく使われています。特にヨーロッパでは目にする機会が多いですね。
イメージとしては高級感やラグジュアル感を連想させるので、ブランドや宝飾の世界でも使われていることが多いです。
セリフ体の中でも、old style(斜めセリフ)と呼ばれるものは最古の書体と言われています。
サンセリフ体とは(モダン書体)
サンセリフ体は、日本語書体でいうところのゴシック体。グラフィックデザインが盛んだった19世紀頃に新しく生まれた書体です。装飾を省いた直線的なモダンフォントです。近年、セリフ体のロゴを使っていた企業の多くがサンセリフ体のロゴへシフトしているのも気になるところ。ユニバーサルデザインの観点から見てもシンプルで見やすく設計されています。
フォントの基本知識(定番フォントを理解する)
何に使うにしても、定番のベーシックフォントは欠かせません。タイトルでも本文でも、どこでも使えることが魅力です。飽きのこない形、時代を感じない形。これらをうまく使いこなしてこそデザイナー。文字の持つ美しさを最大限に引き出しましょう。
セリフ体の定番フォント「Times」
セリフ体の中で一番有名なフォントといえば「Times」と「Times New Roman」。イギリスの最古の新聞「タイムズ」のフォントとして有名です。ここはセリフで決める!という場面ではとりあえずTimesでレイアウトを組んでおきます。
セリフ体にも様々な特徴があるので、他の特徴的なセリフ体「Athelas」「Baskerville」「Cochin」の3種類を使ってレイアウトを見てみます。数字など、絶妙に表情が違うのがポイントです。
Athelas
数字を印象的に使いたいならオールドスタイルのフォントがおすすめ。オールドスタイルのフォントは絞りが少なく、わりと寸胴なのが特徴です。Athelasは全体的にクセもなく、クラシックなデザインで活躍します。古臭くもなく、綺麗なレイアウトが組めるフォントです。
Baskerville
縦と横の太さに差があり、絞りが強めなのはモダンタイプのセリフ。bodoniよりも新しい感じで、柔らかな透明感もあります。すっきりと細めのラインが女性向けのデザインに向いています。
Cochin
ウェイトが下側にあることで上下の余白がはっきりし、メリハリが効いています。oが正円に近いセリフ体は結構少なく特徴的です。流し打ちするだけでもいい感じにキマるモダンスタイルのセリフ体。
サンセリフ体の定番フォント「Helvetica」
サンセリフで古くからあるフォントといえば「Gill Sans」や「Futura」ですが、一番広く使われている有名なフォントなら、スイスで生まれた「Helvetica」でしょう。
フォントの王様として君臨し、デザイナーの間ではHelveticaを使って美しいレイアウトが組めることが一流だと言われてきました。Helveticaを使ってデザインするのはイージーなようで難しい。凡庸すぎて特徴がない分、ありきたりなデザインになりがちな印象です。使いこなすことが難しいフォントでもあります。
サンセリフ体が人気の理由は、種類の豊富さです。light〜boldまで太さの種類が微調整でき、italicやoblique(斜め)、condensed(長体)といった装飾体も揃っており、同じ書体で様々な変化をつけることができます。
セリフ体を選ぶときのポイントは「数字」と「a、y、G、Q」の形。大きな変化はここに現れるので、よく厳選しましょう。
特徴的な3種類のサンセリフ体を選出します。
Avenir (Next)
Avenirはウェイトの種類が豊富で使いやすく、シンプルで何にでも合うベーシックなフォントです。数字も綺麗に組めるので、サンセリフで迷ったらとりあえずこれがおすすめです。
Futura
特徴的な幾何学デザインのミッドセンチュリー系フォント。いわゆる有名なデザイン書体的な扱いとして有名です。Gill SansやCentury、Avant Gardeも同じ仲間。数字も整っているので文字組みが綺麗に決まります。
DIN Alternate
一番新しい形の縦長サンセリフです。ここ数年はこの細長いフォントが流行っています。デジタル系やスポーツ系でもハマりますし、トレンドっぽくしたいならこの種類の派生フォントがおすすめです。
フリーフォントからデザインに合ったフォントを探す
ここで紹介したフォントは基本ベースの書体です。ここから派生しているフォントは星の数ほどあるので、種類さえ決まればあとはいくらでも探すことができるはず。例えばdafontというフリーフォントのサイトなら、Basicカテゴリの中にある「Sans serif」と「Serif」から様々な形のフォントが選べます。
違う種類のフォントを使いすぎるとデザインにまとまりがなくなるので、一つ作品に対して2〜3種類までにしておきましょう。