イラストレーターには「パスファインダー」という便利なツールがあります。例えばオブジェクトやパス同士を合体させたり、分割したり、切り抜いたり、、、ボタン一つで簡単にできる10種類のパス編集モードが「パスファインダー」です。
パスファインダーが活躍するのは、主にイラストやロゴマーク制作のとき。色分け、レイヤー分け、入稿時の版分けなど、パスをきれいに整えるときに使います。制作段階でパスを整えておかないと、あとで大変な苦労をすることも。今回は、パスファインダーを使った効率的なイラストやロゴマークの作り方について掘り下げて書いていきたいと思います。
目次
Illustrator(イラストレーター)のパスファインダーを活用してイラストやロゴを作る
今回はサンプルとして、簡単な星のロゴマークを用意しました。
今はまだ星マークが3つ重なった状態ですが、これを黄色と青色に分離させ、シルクスクリーン印刷にも対応できる完全データに作り替えていきたいと思います。
理想はこんな感じで、青い部分と黄色い部分に分けたい。
この状態を作るのに、どのパスファインダーを使えば一番早く仕上げることができるのか、実験してみたいと思います。
【ポイント】星マークは「作ったままの状態(線あり)」と「パスをアウトライン化した状態(線なし)」の2つで比較してみます。
パスファインダー(形状モード):合体
まずは「合体」してみます。
選択したすべてのパスが一つにまとまりました。星のフレームが消えてしまったので、これは不適合です。
パスの合体は、パスを一つにまとめる時に使います。パスが複雑に交差しているオブジェクトなどは、レイヤーの数が多くなってごちゃごちゃになりますよね。そんなときはパスの合体を使って一つのレイヤーにまとめてしまうと作業が楽です。(編集途中ではやらない方がいい。元に戻せなくなるから。。)
パスファインダー(形状モード):前面オブジェクトで型抜き
次に「前面オブジェクトで型抜き」をしてみます。
一番下にあるパスが、前にあった2つのオブジェクト形状で切り取られました。アウトライン化した星マークは塗りだけが残る結果に。リンゴがかじられたような某ロゴマークはこれで作れそうですね。
この型抜きは、文字抜きなどにもよく使われます。文字を抜くことで、後ろにある背景を拾うことができるようになります。
オフセット印刷では白色のオブジェクトは透明と認識されますが(オフセット印刷に白色インクはない)、シルクスクリーン印刷(特色)の場合は白色版として認識されるので注意。型抜き処理をしておかないと、青色と白色の2色版になってしまうので、版とインクのコストが2倍かかります。(Tシャツとかね)
ということで、これも不適合。
パスファインダー(形状モード):交差
次は「交差」をしてみます。
パスが交差している部分だけが残りました。アウトライン化の方では複数選択での交差は出来なかったので、2つずつ選択し、交差を適応させていくしかないようです。そのままの方では普通に出来たので、数やレイヤー、グループなどのルールがあるのかも。
これも不適合。
パスファインダー(形状モード):中マド
続いて「中マド」です。
中マドは交差の反対なので、交差している部分が切り取られる結果に。複数のオブジェクトでパスファインダーを使うと結構予想が難しいですね。2つのパスで使うと下図のようになります。(交差はこの逆。真ん中が青色で残ります)
これも不適合。
パスファインダー:分割
パスの「分割」を使ってみます。
ん?アウトライン化した方は使えそうかも?一見変わってないようにも見えますが、ピンクのラインで全部分割されているので、バラバラに分解するとこうなります。
これを色別に合体させれば黄色と青色のオブジェクトに分離できそうです。まずは一つ目の色分け方法を見つけました。でも完璧ではないですね。
パスファインダー:刈り込み
次は「刈り込み」をやってみましょう。
お!上手く分離してそうです!アウトライン化した方がきれいに色別に分かれましたね。これは使えます。刈り込みを使うと、見えている部分のパスだけがパーツ分けされるようです。見えてる部分で分離させたいならこれがいいかも。
パスファインダー:合流
続いて「合流」です。
お!またもやアウトライン化の方は分解できましたね!しかもシェイプ化されてるのか、角の部分を丸めたりする作業もできそうです。境界線での切り離しもないので、これが一番良さそう!
パスファインダー:切り抜き
次は「切り抜き」です。
後ろにあるパスが、前のパス形状で切り取られるみたいです。複数のパスでやると複雑すぎてよくわからなくなりました。これは2つのパスでやった方がわかりやすいですね。本当は下図のようになるのが正解です。マスクのような感じですね。
パスファインダー:アウトライン
続いて「アウトライン」もやってみましょう。
ちょっと細くて見えにくいですが、パスの部分が全て線に変わり、塗りの部分がなくなりました。さらに交差している部分で線が分解されているようです。わかりやすいようにバラしてみると、こんな感じ。
プラモデルみたい。
パスファインダー:背面オブジェクトで型抜き
最後は「背面オブジェクトで型抜き」です。
前のオブジェクトが後ろのオブジェクト形状で切り取られました。これも複数のオブジェクトが入るとわかりにくいですね。2つのオブジェクトでやるとこうなります。
リンゴがかじられたような某ロゴマークはこれでも作れそうです。
結果:オブジェクト(パス)を色分けするなら「合流」がベスト(分割と刈り込みでも可)
実験により、オブジェクトを色別に分けるには「合流」が一番手取り早くできることがわかりました。分割や刈り込みでもできますが、合体させる一手間を考えると、そのまま使える合流が一番手取り早く効率的ですね。
色分けの手順をまとめると「パスのアウトライン化」→「パスの合流」→「分離」となります。
これもパスファインダーを使わず自分で作ると、結構な労力と時間が剥ぎ取られるんですよ。知っているのと知らないのとでは作業効率に大きな差が出るんです。
こんな感じで、どうやったら綺麗に早く作れるのか、色んな実験を繰り返しながらみんな上達していくんですね。イラストレーターの機能をフルに使えるようになると、効率よく制作ができるようになり、非常に楽です。どうやって作るのか頭の中で考えるのも大事。
今回の実験で分かった色分け、レイヤー分け、版分けというのは、入稿データを作るときに必要な作業です。特にロゴマークなど、色んな媒体へ使い回しされるデータに関してはしておいた方がいいですね。最低でもパスのアウトライン化と合体くらいはしておいた方がいい。拡大縮小で形が変わることがあるので。これは完全データで納品するための知識でもありますね。